賃貸物件における現調(現地調査)の作業工程の解説

原状回復工事 職人さん向け

はじめに

今回は賃貸物件において原状回復工事を行う前の「現調」の作業方法をわかりやすくご紹介していきます。

現調とは

まず現調とは現地調査の略で、補修や交換の必要性の有無を決めるために実際の部屋の状態を確認する作業です。
現調の結果をもとに工事の見積もりを作り、オーナーあるいは管理会社に報告するため、現調作業では修理・補修は行いません。
この現調が甘いと見積もり金額を見誤って赤字になってしまったり、工事後に不具合が生じて無償対応せざるをえない、なんていうトラブルが起きやすくなるので注意が必要です。

全体の流れ

工務店や職人さんによって多少の違いはありますが、まず壁紙・天井・床の確認を行い、次に水回りの確認を行った後、周辺設備の確認を行います。最後に写真撮影を行って現調は完了となります。

クロス(壁紙)・CF(クッションフロア)の確認

一般的にクロスやCFは6年間が交換の目安とされていますが(※)、目立った傷があればこの現調の時点で交換するべきかどうかを確認していきます。

  • 全体的に黒ずんでいる場合
  • ジョイント(継ぎ目)やクラック(ひび割れ)が見えてしまっている場合

は、次の借主(入居者)が気持ち良く住めるように、張り替えの提案をしてあげましょう。

※賃貸物件においては、貼替後6年経つとそのクロスやCFの残存価値が1円になると、国土交通省のガイドラインで定められています。

玄関

まず、玄関から廊下にかけて壁や天井のクロスを見ていきます。このとき傷やはがれた跡があると交換の必要性があります。

クロスのジョイント(継ぎ目)部分が見えてしまっていたり、地震などで生じるクラック(ひび割れ)があると張り替えを行う必要があります。

キッチン

キッチンでは床がクッションフロアの場合、冷蔵庫などの跡が残りやすいのでその場合は張り替えをします。

トイレ

トイレも同様の流れでクロスを見ていきますが、クロスの端がはがれ始めている場合がよくあります。

この場合も老朽化が進んでいる目安となりますので、張り替えを行う必要があります。

洗面脱衣所

洗面脱衣所がある場合も同じ要領でクロスと天井、床の状態を確認していきます。今回は目立った傷はありませんでしたが、長年使っていると全体的に黒ずんでしまうため、クロスを張り替える必要があります。

寝室

寝室では家具やベッドがあった場所に家具跡ができている場合があります。

賃貸で原状回復工事の費用を貸主が負担するのか、それとも借主が負担するのかで良くもめるのがこのクロスの汚れ、家具跡です。

ですがこの場合は、生活の中で自然に生じるものなので入居者が費用を負担する必要はないですが(※)、張り替えが必要です。

※家具跡や冷蔵庫裏の電気焼け等は借主の責ではないとガイドラインで定められています。

クロスで部分的に補修されている部分が多いと見栄えが悪いのでその一面を張り替えることがあります。

また、押入れのクロスも長年の使用で黒ずんでいる場合は交換する必要があります。

今回は押入れの中と寝室でクロスの種類が異なっていました。恐らく前回の工事・クリーニングの際に押入れの中のクロスを張り替えなかったためだと考えられます。

結果的に今回の現調ではクロスに関しては全体的に黒ずんでおり、老朽化が進んでジョイントやクラックが見えてしまっていたので、全面を張り替える必要があると判断しました。

最終的な工事の内容は貸主、オーナーが判断しますが、あくまで次の借主、入居者が快適に暮らせるよう隅々まで現調し、工事の提案をすることが大事です。

水回りのチェック

キッチン

まずはキッチンからチェックしていきます。水栓を全開にしてハンドルの隙間から水漏れがないかを確認します。

手で軽く握って濡れていないか確認するか、ティッシュなどを当てて濡れていないかチェックしましょう。

水漏れがある場合は水栓の内部部品、パッキン等が劣化しているので交換する必要があります。

このように水を流した際に水栓の根元、回転部から水漏れがある場合、修理又は交換が必要になります。

修理を行う際に必要になるので、水栓の型番をこのように確認しておきます。

シンク下の給水管

シンク下にキッチン水栓に繋がる給水管があるので、止水栓(ハンドル回り)も漏水していないかチェックします。また、排水ホースの接続部分に水漏れがないかも確認していきます。

次に、排水ホース下から異臭がしないか確認します。
異臭があれば排水ホース(シンク下蛇腹部)と排水パイプ(キッチン床下の元の排水管)を接続している防臭ゴムが劣化していたり変形している可能性が高いです。

トイレ

トイレではまず便器とタンクの間や便器と床の隙間から水が漏れていないかを確認します。水が漏れている場合、その箇所と原因を見極め、最小限の修繕で済むよう調査します。稀に便器が破損している可能性もあるので、その際は本体交換が必要です。次に、トイレのタンクを確認します。

タンクのしくみ

まず、タンクのしくみについて簡単に説明します。

水を流すときに使用するレバーハンドルを回すと、そのハンドルからチェーンで繋がっているフロートバルブ(タンク内の水を貯めておく役割をするゴム栓)が上がることで、水が下から排出されます。水位が下がると浮き球が沈み、ボールタップ(給水管から水を流したり止めたりする役割)が開くことで止水栓から水が供給されます。フロートバルブは水位が一定まで下がると自然にふさがるので、水が溜まっていくしくみです。

実際に流してみる

それでは、タンクのふたを開けた状態でレバーハンドルを回して水を流していきます。

その際、フロートバルブがうまく開閉されるか、あるいはボールタップが正常に機能しているか、またその他配管などに破損や水漏れはないかどうかを確認していきます。

※手洗い金具付きの場合、そこに繋がるホースを抑えないと水が上に向かって噴射するので要注意です。

独立洗面台

独立洗面台では、キッチンの確認と同様の操作をおこないます。

冷水と温水の一方ずつを全開にして水漏れがないか確認します。また、下の排水ホースやパイプに水漏れがないか、そして排水がスムーズに流れるかも忘れずに確認します。

バスルーム

バスルームも同様にまず水栓のハンドルを両方とも全開にします。

その際、水栓のハンドルの操作性を確認します。ハンドルが硬くなっている場合はスピンドルが劣化している可能性が高いので交換する必要があります。(キッチン水栓、洗面台水栓も同様)

次に、シャワーとホースの接続部から水漏れがないかを確認します。次に蛇口の方に切り替えて同じように接続部分に水漏れがないか確認します。

シャワーとカラン(蛇口)の切り替えが正常に機能しているかどうかを切替レバー(ひねり)を回して実際に確認します。

切替レバーが劣化していると、シャワーなのにカランから水がちょろちょろ出てしまったり、逆の現象が起きます。その際は切替弁という内部部品を交換する必要がありますので、要チェックです。

次に、鏡を確認します。破損がある場合は交換の必要がありますが、白い水垢がある場合はクリーニングで落ちるので交換の必要はありません。

また、バスルームでは壁や天井にカビが生えていることが多いですが、大部分はクリーニングで落ちるので問題はありません。

しかし、シーリング部分に生えているカビはその浸食具合に寄って落ちないことが多々あります。目視で確認し、カビが酷い場合はシーリング打ち替えの提案をしましょう。

設備のチェック

次に、設備のチェックを行います。ここでは、各部屋に取り付けられている設備や部品に破損や故障がないかを確認します。

玄関

玄関ではドアノブとドアスコープが正常に機能しているかどうかを確認します。

ドアスコープは実際に覗いてみて正常に機能していれば大丈夫です。

次に、ドアクローザーが正常に作動しているかを確認していきます。

このドアクローザーはドアを閉める際に閉める速度を変える機能を持っているので、調節部分のねじをドライバーで回して速度が変わるかどうかを確認します。
ドアクローザーは長年使用すると劣化し、調整が利かなくなります。また、中の油が漏れてくることがあり、いずれの場合も基本的には交換対応となります。

シューズボックス

次に、シューズボックスを開き、棚の各段がぐらついていないかを一つ一つ確認していきます。板を支えている部品(ダボ)がなくなっていることがよくあります。

キッチン

水回り以外では換気扇が正常に作動しているかを確認していきます。
電源を入れても作動しない、異音がする場合は修理・交換が必要です。

キッチン周辺の棚の開閉および棚のぐらつきも確認します。

トイレ

トイレもトイレットペーパーホルダーやタオル掛けの取り付けに問題がないかを確認します。棚が設置されている場合は開閉の確認と棚のぐらつきを確認します。

独立洗面台

独立洗面台では全体的に破損がないかを確認し、引き出しや扉などは開閉の確認を行います。

棚がある場合も、扉の開閉と棚のぐらつきの確認を忘れないようにしましょう。

寝室・DK(ダイニングキッチン)

まずはドアの開閉を確認します。ドアノブの破損がないかどうかも確認していきましょう。

次に窓の開閉を確認します。その際、窓ガラスや網戸、カーテンレールの破損がないか確認します。

カーテンのフックも個数がそろっているか確認します。

次に、スイッチカバーやコンセントカバーに破損がないか確認します。

また、DKにバスモニターが設置されている場合は動作確認を行いましょう。

インターホンは音が鳴るかどうか、モニター付きの場合は正常に映るかどうかを確認します。
次に押入れの扉の開閉を確認します。棚の部分もぐらつきがないかを確認していきます。

エアコンの動作確認

最後にエアコンの動作確認を行います。エアコンを最も低い温度に設定して正常に作動するかどうかを確認しましょう。

部屋が涼しくなるまでに時間がかかるので現調を行う前にエアコンの電源をつけておくと効率よく動作確認ができます。

バルコニー

バルコニーで確認する設備は主に給湯器です。

給湯器を確認するといっても現調の段階ではガスが止められているため、動作確認はできません。なので、給湯器では型番に書いてある製造年を確認していきます

このように赤枠で囲まれた部分に型番号があります。この番号の最初の2桁が製造年を示しており、15と書かれている場合は2015年製造であることを示しています。

この製造年が10年以上経過していると交換の必要があると言われています。
ちなみに、この製造年はどのメーカーの給湯器においても共通の表記がされています。

写真撮影

目的

現調作業ではこれまでに確認した項目をチェック表などに記入し、それを元に見積もり書(積算書)を作成し、オーナーまたは管理会社に提出します。その見積もり書を作る際、部品の選定等で写真を使うことが目的の1つです。

また、最終的にその工事を行うか否かの判断を下すのはオーナーであり、オーナーに工事の提案をするのが管理会社なので、現況がどういう状態でなぜ工事が必要かを知ってもらうために写真を送るのも目的の1つです。(オーナー、管理会社によっては特に工事前後の写真が必須の場合があります。)

撮影方法

まずは各部屋の写真の全体図を撮影していきますが、全体が写りきらない場合は下段、中段、上段などに分けて撮影するとよいです。また、補修や交換が必要な箇所は別に撮影し、品番があるものは全て撮ります。

※同じ部屋でも撮影する場所を変えながら何枚か撮影するとより詳細な画像が得られます。

まとめ

今回は現調作業の工程をご紹介しました。現調の手順は現調者によって異なる点がありますが、結果的に確認する内容は同じです。自分が一番効率的に作業を行える手順があればそちらを優先させたほうが良いでしょう。

また、今回ご紹介した以外にも詳細な現調方法や特殊ケースがあれば順次更新していきます。

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