賃貸では退去時に居住者が入る前の状況に戻す義務(原状回復義務)があります。しかしその規定は曖昧だったり、そもそもどこまでが通常の経年変化といえるかは業者や地域によって判断が異なります。
ざっくり言うと
- 通常の使用範囲内で生じた損耗・汚れは回復義務は負わない
- 何が通常の損耗か、過失によるものか、判断が分かれる
- 気になる点は自分の責任なのかあらかじめ原因を調べるべき
原状回復義務 基本のおさらい
そもそも住居は年月が経てば使い方がどうであれ、使っていなかったとしても劣化するものです。これを
経年変化、通常損耗といいます。そしてこの通常損耗については入居者が負担する必要はありません。
国土交通省ガイドラインより
これ自体は基本事項なので、「次の入居者がこのままだと入らないから退去するならリノベーション費用を支払え」なんていうことはまずあり得ません。
問題は
どこまでが通常損耗で、どこからが入居者の管理不足となるかです。また、損耗には
耐用年数という概念が関わってきます。例えばクロス(壁紙)の耐用年数は6年なので、もし3年住んだ部屋なら
居住年数÷耐用年数で50%分を居住者が、残りを貸主が負担します。
ただし仮に6年経過したとしても綺麗でそのまま使えるクロスに落書き等をして価値を毀損させるとやはり過失分に対して回復義務が発生するので難しいところです。
具体的にクロスや床ごとに争点となる部分を見ていきましょう。
クロス・壁
クロスの場合表面の汚れ、画鋲の穴、カビ、剥がれや色焼け、壁穴などが争点になります。
画鋲の穴は普通の生活を送ると多少は画鋲を使うので貸主負担となるのが一般的です。補修の際も多少の画鋲穴はクロスを貼り替えるよりもコーキングで目立たなくすれば補修費用も大して発生しません。
ただし穴が大きかったり普通の使用範囲を超えて無数に開けてある場合は賃借人の負担となります。
この程度の穴なら問題ないでしょう。
補修もコーキングだけで十分です。
画鋲の穴と異なり、ビス(ネジ)の穴は賃借人負担になります。
表面の汚れや色焼けはジュースをこぼしてシミになったりタバコのヤニが付いた場合貼り替えが必要で賃借人負担です。普通は汚れた部分だけを直せばいいですが、クロスがツギハギ状態になると見栄えが悪くなります。
契約によっては補修は箇所ごとの平米でなく一面単位で行う場合もありますが、このあたりは最もトラブルになりやすい部分です。(あくまでもですが)傾向としては賃借人に有利、つまり
汚した範囲外の補修義務を負う必要がないことが多いようです。
クロスに
カビが発生するのは部屋自体の問題と賃借人側の問題の両方があります。そもそもカビが発生した時点で大家さんに報告したりなんらかの対応が必要です。あとから自然発生していたと言っても放っておくのは問題です。
といっても、そもそも建物にも湿気が発生しやすい環境があるのでその点については責任を負う必要はありません。ましてや外壁の穴から雨水が侵入してカビになっているようなケースでは賃借人側の責任を問うのは難しいでしょう。
黒ずみはカビですが、この例では外壁から雨水が侵入しているのが原因でした。
しかしこういった例では賃貸管理・建築方面への知識がない限り「これはあなたの責任です」と言われてしまうと反論できないので、賃借人の方はあらかじめ気になる点は原因を調べるべきです。