トイレの個室にクロスを貼る貼り方と注意点を解説

トイレのリフォーム 壁紙(クロス)の張替え

トイレの個室にクロスを貼る

今回は前回作成したトイレ個室の練習台を使って、実際のトイレの内装を解説します。

トイレの個室の難しさ

トイレの個室はなんといっても便器があることでタンクや便器の裏側、タンク上の天井などが非常に貼りづらく、さらに給水管や窓、壁の梁、棚などが付いている場合には難易度がぐっと増します。

内装職人の間ではトイレのクロスをしっかり貼れれば一人前、床のクッションフロアもトイレを外さずに貼ることで費用を安くすることができるので職人としての腕前もはっきり出る部分です。

個室を作って練習用に

個室

前回はトイレの個室を作成しました。
ベニヤ板とコンパネ、パイン材を使って簡単に作れます。

トイレの個室の模型を作る CF・クロス貼りの練習に。

トイレのCFやクロスを貼り替えるのは、便器やタンクなどの設備が邪魔になるので難易度が高いです。そこでブースを作ってトイレを再現し、練習することで効率よくトイレまわりの施工を覚えることができます。今回ブースを作ったので紹介します。

トイレの個室の模型を作る CF・クロス貼りの練習に。
2016/04/28 13:14

廻り縁の取り付け

まずは本物のトイレらしく壁の端に廻り縁を取り付けていきます。
クロスを貼る前につけたほうが廻り縁取り付け時にクロスに傷つけることがありません。

廻り縁

これが廻り縁です。住宅の天井と壁を区切る木材として一般的に使われます。

廻り縁は装飾としてアクセントになる効果もありますが、壁と天井、壁同士のつなぎ目の線が微妙に歪んで曲がっている場合には綺麗にクロスをつなぐのが難しい場合もあるので、見切りとして区切ることでクロスを連続させずに済む意味合いもあります。

廻り縁を切る

廻り縁は加工した木製の材料なので、ノコギリで切断します。

丸ノコで切る

丸ノコがあれば丸ノコで切るのが楽です。
また、廻り縁同士の接合面を45度に切る際にもこういった丸ノコで角度を測ります。

タッカーで止める

ガス式タッカー

ガス式のタッカーで廻り縁を固定していきます。
ドライバーとビスでもいいですが、タッカーの針のほうが表面に目立ちません。
タッカー針の色は何種類かあるので、廻り縁の色にあったものを使うか針頭が目立つ場合には上から色を塗ると良いでしょう。

天井を貼る

通常の部屋と同じく先に天井からクロスを貼りますが、基本的に便器に乗ることは避けます。

小さめの脚立

このような小さめの脚立を使ってトイレの便器手前に置きます。

背面から端を貼っていく

背面から

背面を肩幅分しっかり貼って、あとはクロスの端が落ちてこないようにくっつけてやります。

進行する

体の向きを変えて進行方向に進みます。
あとは片手・肘で押さえながらクロスを伸ばします。

縁をしごく

貼ったあとはクロスを撫刷毛で撫でて、クロスの端を角ベラでしごきます。

縁を切る

地ベラを当てて、カッターで切ります。

このとき地ベラは薄いものを使っています。これは廻り縁の色が濃いときには薄ベラを使ったほうがクロスの端が綺麗に見えることが多いためです。

糊を拭き取る

糊を拭き取る

切ったクロスの縁にはクロスの糊が溜まっているので、これを濡れ雑巾で拭きとってください。

糊を拭き取らないと…

クロスの糊

クロスの糊をしっかり拭き取らないと乾いた後でこのように膜ができます。
必ず2度3度と拭きとって、指でぬめり気がなくなったことを確認しましょう。

タンクの裏側

ではいよいよタンク裏側のクロスを貼ります。まずは無地のクロスです。今回は柄と無地でやや異なる貼り方をします。

クロスをタンクに

クロスをタンクに付けないよう、広げて横からするすると回し込みます。

クロスが壁やタンクにつくとべたっと動かなくなってしまうので、上から持って手で上下しながら動かしてやると良いです。

入隅を決める

次に左の入隅から貼ります。

というのは、右利きの場合右の入隅のほうが貼りやすいため、左をなるべく切らずに済むように左の入隅に合わせてピッタリになれば切るのが片方だけで済むからです。

そのまま下へ

そのままクロスを下に伸ばしてエアを抜きます。

下で足りなくなった

下で足りなくなった

このようにクロスが足りなくなってしまいました。
実はこれはわざとこのように足りなくしています。

結局この上に巾木を貼るので、クロスの足りない部分は巾木で隠れます。むしろクロスが下で余った時に手を回して切るとけっこう大変です。

このようにタンク裏のクロスはなるべくサイズを壁にピッタリ合わせ、切ったり調整する箇所を最小にするのがコツです。

右を切る

あとは右の余ったクロスを切ります。
(これは練習台なので手前の壁がありませんが、ここでは右側面に壁があるという設定です)

2枚目の貼り方

2枚目

2枚目もなるべく入隅で切らずに済むようにピッタリと当てて、ただつなぎます。

入隅が曲がっていなければ2枚目のクロスも綺麗に貼れます。

ジョイント部分をコーキング

ただしどうしても入隅で切る処理がないとわずかな隙間ができて、下地が見えてしまいます。白いクロスだと隙間ができると隙間は黒く見えるので、けっこう目立ちます。

そこで隙間は水性コーキングを挿しておきます。

コーキング

このコーキングの色は白いので、白いクロスの上に挿しても全く目立ちません。
一方柄だとコーキングの色が合わないと目立ってしまうのでこの収め方は(工夫しないと)できません。

柄がある場合の貼り方

次は柄がある場合の貼り方を行っていきます。

クロスを通す

同じようにタンクの脇から糊のついたクロスをするすると通します。

柄の割り付け

今回、最も難しいポイントになります。それはこの柄のどこを重要視して、どこを切るか(どこを残すか)という点です。

単純な例で長方形の壁の右からタイルを貼っていくと、左側でピッタリ合うほうが珍しいです。このクロスはタイル調なので、それと同じことが言えます。

さらに壁が長方形とは限りません。梁があったり、さらに壁が歪んでいると上の横幅と下の横幅が数mm異なる場合もよくあります。(構造の寸法が狂っている場合)

割り付けには決まりがあるわけではない

このようなクロスの位置決めを割り付けといいます。割り付けには基本的なセオリーがありますがクロスの柄と現場の状況、構造を考えて職人さんがベストだと思うように都度割り付けます。

今回はタイル柄の目地がよじれたり、壁の途中で切れる、曲がることがないようにすることを第一としました。

1枚目の入隅

1枚目

上述の割り付けの方針にもとづき、1枚目の入隅の位置ですがタイルの縦の目地がピッタリ合うようにして、目地を残すように切ります。

狭いタンクの脇は…

手を入れて

タンク脇は非常に狭く、また右利きの場合は左側が切りづらくなっています。
カッターナイフの柄を長くするなど工夫します。

2枚目の入隅

次に2枚目を貼っていきますが、1枚目のクロスは目地を残しました。今度の2枚目で目地を落として繋げば綺麗に入隅に目地が1本通るはずです。

2枚目

目地が入隅にピッタリと合うように調整します。
壁が歪んでいると入隅が曲がっているのでクロス自体を指先の力加減で伸縮させて貼ることです。

2枚目を切る時

2枚目を切る際は1枚目のクロスの端を少し起こしてください。これには理由があって、2枚目を貼り終えてから1枚目を綺麗に戻すことで1枚目が2枚目に対してまくれてかかり、目地が表面に出るためです。

目地を切る

2枚目の縁を薄ベラで、1枚目の左側を厚ベラで切っています。

戻す

めくれたクロスを戻してかぶせ、目地が表に出るようになりました。

3枚目の貼り方

3枚目を貼るときの注意点ですが、まだクロスを張っていない部分の寸法を測ってみてください。
今回は上と下で幅が数mm狂っていたので、左側の入隅に綺麗に目地がぶつかるようにしています。

右からつなげるのではなく、左から位置を決めて右のちょうどいい部分と合わせます。

目地の右を切る

重なった部分で上から切りますが目地を必ず残すようにして、目地の右側を切ります。

下敷きテープを敷いて上から切ったら残骸を抜き取ります。
あとはローラーで収めてください。

それ以降

あとは入隅・平場のつなげ方の繰り返しになるので上記の方法を使えば貼れます。

入隅

まとめ

前回の練習台製作からクロスと廻り縁だけで大きく印象が変わりました。トイレは設備の交換時にまとめて内装を変更するケースが多いと思いますが、賃貸などでなるべく低コストに部屋の印象を変えたかったり、原状回復する場合はトイレ個室をうまく貼っていく技術が必要になります。

今回は給水管や梁がない簡単なバージョンでしたが、実際の建物はもっと複雑な形をしているので練習してみてください。

Before

After

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