全国的に空き家が問題になっていますが、あなたのご実家は大丈夫でしょうか。これから人口が減少し空き家が増え続けると、普通の場所にある普通の住宅もうまく活用しないと資産どころか税金のかかる厄介ものになってしまうかもしれません。
厳しくなっていく地方住宅事情
このグラフは住宅戸数と空き家率を示したものです。空き家率は右肩上がりになっています。しかもこれは人口が増えていたころの推移なので、今後人口が減っていくことを考えれば住宅需要は下落し空き家率は加速的に高くなるのが予想できます。
その結果親の実家を相続したときに貸し手・買い手が見つからない、売却価格が予想以上に安い、更地にしても有効利用する手立てがないといった事態がどんどん発生しますし、一方で空き家の管理コストがかかる、毎年税金がかかるので逆に負債になってしまうリスクがあるのです。
主な選択肢
それでは実際に親の住宅(戸建て・マンション)を相続したけれど、自分はすでに別のマンションに家族と住んでいるので離れられないようなケースで、どのような有効活用があるのか考えてみます。
賃貸にして人に貸す
空き家の増加と一緒に賃貸の空室率も上がっているので簡単に借り手が見つかる保証はありませんが、実家・土地に愛着があって手放せないときには一番いい選択肢です。
ただし借り手が見つかるのは首都圏近郊や地方都市なら主要駅・中心市街地から徒歩圏内などに限られ、地方でアクセスが悪いような場所だと難航します。
また、築年数やリフォームの有無も重要です。築15年未満の築浅なら借り手が見つかりやすいですが、築50年を超えていて外見的に古い建物だと相当厳しくなります。
さらに広い家も今どき家族7人8人というようなこともないので需要はありません。
売る
決断さえできればもっとも手っ取り早い選択肢です。不動産会社との契約、登記簿や税金関係を一度処理すれば手離れします。
しかし、一度売った土地・建物を取り戻すのは難しいですし、そのあとでどのように使われても文句は言えません。先祖代々持っているような土地が次に見たときパチンコ屋や墓地になっていたらいい気分はしないでしょう。
しかし現実問題として空き家が増加していく時代、持っていても管理コストと税金だけがどんどん吸い取られるより売却を選択するのは合理的な判断でしょう。売却の場合も買い手が付くのは築が浅く、立地が良い所です。ファミリー世帯が車を主体に生活するので立地よりは建物のほうに比重が置かれることが多いです。
アパート経営
建物を取り壊してアパートやマンションを建ててうまくいくのは都心・駅チカの好立地物件に限られ、その他はほぼ無理です。
事業用地にする
土地を更地にして、駐車場、駐輪場、トランクルームなどに転向する場合は頭金が発生します。意外と土地によって特別なニーズが存在する可能性もあるので不動産会社に相談してみましょう。
民泊、別荘など
今後活用が期待されるのが民泊^1です。もしスキー場や温泉などに近ければ国内・国外の観光客に宿泊施設として貸せるかもしれません。その場合は一時的なイベントなので、となりのトトロに出てくるような年季の入った家屋のほうが真新しい家よりも人気が出ることもあります。
また最近普及しているクラウドファンディング^2で建物を別荘に改装し、支援者に使ってもらうといった事例も存在します。
ただしここまでするには積極的な管理・運営が必要になるのでどこまで現実的にできるかは管理業者などに相談してみましょう。
更地にする
ボロ屋の場合は管理も面倒なので、このひとまず更地にして土地だけ持っておくのが有効です。この場合の注意点は土地の固定資産税で、住宅用地から外れると税率が数倍上がります(厳密には特例の減額がなくなります)。いったいいくら上がるかはこちらのシミュレータで計算してみてください。借り手も付かないような土地では土地の評価額もかなり低いはずなので、大して変わらないかもしれません。
そのまま持つ
多くの選択肢を紹介しましたが、売れるわけでも使うわけでもなく、とりあえず2年、3年と経過しそのまま持ち続け空き家になるケースも非常に多いでしょう。
確かに自分が老後に住む可能性もないわけではありませんし、一応実家を残すことはできます。
しかし時間が経てば経つほど売るのは難しくなります。人が住んでいるよりも空き家のほうが湿気やホコリで家は老朽化しますし、供給過多の市況が改善されるとも思えません。
とりあえず持っておくよりは売るほうが楽
明確な利用方針があるとか、何年後かに住む予定がないのなら売るのが一番早い選択肢です。現実的にその他の運用(賃貸、事業化など)にはノウハウと手間が必要なので、遠隔地に住んでいると難しいでしょう。
売る場合もたいてい予想金額を下回った査定となるので、せっかく両親が残してくれた家をこの金額で手放すのはもったいないという思いもあると思います。が、全国的に家も土地も余っている時代なのでやむを得ないでしょう。
もし家がまだ空き家になっていない場合は親族で話し合う機会を設けてはいかがでしょうか。

