空室率が全国的に高くなり空き家が問題になっている中、最近はコスト削減を目的に大家さんがご自分で所有物件の原状回復工事やリノベーションを行う事例が増えつつあります。いったいどれだけのコスト削減になるのか、気軽に始められる簡単な施工は何か、DIYリフォームの成功事例などを見ていきたいと思います。今回は原状回復工事編です。
大きく2つのリフォームがある
賃貸の場合は大きく分けて2つのリフォーム工事が存在します。一つは原状回復工事で、これは居住者が退去した際に傷んだ壁や床などを補修・清掃して次の入居に備えるものです。
もう一つはリノベーションで、空室が埋まらない時に施策としてデザイン性をアップしたり、古くなったキッチンやトイレなどの設備を交換して物件をアップグレードさせる工事です。基本的に原状回復工事よりも工事費・工期とも大きくなります。また、施工ができるだけでは不十分で、入居者心理を意識したプランニング、デザインなども必要になります。
コストを削減したい大家さんにとって入退去の際に毎回発生する修繕費は額が小さくても節約したいものです。そこで、まず原状回復の際に簡単な修繕から大家さんが行ってみて、できることを増やしていくのが良いでしょう。
また、部屋の統一感を守ることも必要です。手作り感のあるDIYを一部に持ち込んでも変に浮いてしまいます。
修繕費を浮かすコツ
なんでもかんでも自分でやればコストカットになる、というわけでもありません。例えばクロスの貼り替えは多くの道具や高額な糊付け機械が必要ですし、部屋全体となると時間的にかなりかかってしまいます。そのわりには依頼しても大した額にはならないので、それならクロスは外注しそれ以外をDIYにするほうが得策です。
時間をかければ多くのことはできるのですが、それで空室期間が長くなっては本末転倒なので物件ごとにバランスを考えたほうがいいでしょう。
原状回復のDIY
まずは行っている大家さんも多い、原状回復のDIYについて紹介します。
クロス貼り替え・補修 難易度 ★★★☆☆
貼り替えは範囲が小さいものなら自分でやってみてもいいでしょう。多くの場合、本職の職人さんが使う糊付け機械を用意することはできないので、糊付きのクロスを使うか手で糊を付けることになります。
ペンキ仕上げ 難易度 ★★☆☆☆
塗料とウェスやローラー、バケツと養生材程度を用意すれば始められるので気軽にできるのがメリットです。一般的な賃貸の場合、傷んだドア枠、木部、柱、浴室内などが対象になります。壁に塗ってもいいのですが、ペンキ塗装の壁はデザイン的に目立つので、部屋全体の質感に中和させないといけません。
網戸の貼り替え 難易度 ★★☆☆☆
網の色がブラックタイプのものを使うとちょっとした高級感を演出できます。貼り替えの難易度は網戸の大きさに比例するので、小さい窓からトライしてみます。
コンセントカバー、取手などの交換 難易度 ★☆☆☆☆
入居者が意外と気になるのはドアやクローゼットの取手、コンセントカバー、スイッチ、エアコンのリモコンケースなどの汚れです。壁・床が新しいものでもエアコンのリモコンケースのようなプラスチック素材がどことなく黄色がかっていると古さが目立ちます。
コンセントカバーは1枚100円程度、工具もマイナスドライバーがあればOKです。リモコンケースのようなものも100円ショップや無印良品などでおしゃれなものが入手できます。
配管・金属部分のサビ取り 難易度 ★☆☆☆☆
プラスチック部分は交換すればいいですが、金属部分は簡単には交換できないものが多くなります。そこで表面を丁寧に研磨して金属の汚れ・サビを落とすだけでも効果があります。
ウッドカーペット、タイルカーペットを敷く 難易度 ★☆☆☆☆
簡単に和室を洋間に変更できる置敷きのフローリング代替品として人気なのがウッドカーペットやタイルカーペットです。
これは必要なサイズで購入したら敷いてカットするだけなので、簡単に設置できます。
少しコストダウンしてこういった簡易建材で済ませて、入居者のニーズがあると確認できた際に床材を張り替える(本物のフローリングにする)などの使い方もできるでしょう。
ダイノックシートを貼る 難易度 ★★★★☆
当サイトで頻繁に紹介しているのがこのダイノックシートです。これは施工がけっこう難しく、クロスや壁装の職人さんでも貼れる人、貼れない人が分かれます。失敗しやすいわりに1枚あたりの単価も高いので練習しづらいのです。
しかしこれが貼れるようになればドア枠、壁、床、キッチン等幅広く傷跡を隠したり、表面を新しくリニューアルすることができます。柄やカラーバリエーションが豊富で表面の質感も実物に近い(木目が掘ってあるなど)、耐久性・耐水性に優れているのが特徴です。
目的・費用対効果を意識する
時間的に余裕があって、なおかつDIYが楽しいならベストでしょう。しかし、実際は本業が別にある兼業大家さんがDIYに使える時間は限られてますし、手先が不器用だったりめんどくさがりの方は半端なお家に入居者を住ませてもいけないので、むしろ信頼できる業者さんにほとんど任せ、余裕がある時に手を動かすようにしましょう。趣味として時間をかけてもいいことか、コストカットを目的にしたものかを明確に意識すべきです。
自分でやってみれば分かることですが、本業でないと厳しい施工やシチュエーションも多くあります。例えば入居中に水漏れが起きた場合。入居者の前ですぐに直さなければいけないシーンは緊張するでしょうし、修理に業者でなく大家さんが来るのも入居者としては管理体制が手薄のように感じてしまいます。
何事もやってみることが重要なので、紹介した簡単な施工からでも試してみてください。

