壁を蒸す(ふかす)とは?
建築用語で本来の壁より手前に壁を作り厚みをつけることを”壁を蒸す(ふかす)”と言います。壁が薄いことで外気と内気の寒暖差がある場合に湿気が発生するので、断熱材を埋め込んで壁を厚くすることで湿気対策になります。
施工はおおまかに鉄骨を組んで壁の土台を作る、発泡スチロールとスポンジを足したような材質の断熱材を鉄骨の隙間に配置する、鉄骨に対して石膏ボードを貼っていく、という順番になります。
準備段階
ご覧のように壁にカビが生えています。
このお部屋はマンションの角部屋でこの壁の向こうに部屋はありません。したがって冷たい外気の影響をもろに受けるので、その寒暖差で湿気が生じやすいのです。
(一般に角部屋といえば好物件と考えられていますが、外気にさらされるため湿気が生じやすいといったデメリットもあるのです)
過去に防カビ剤を塗布してクロスを張り替えたりもしましたが結局またカビが生えてしまったので、今回は抜本的に壁を蒸すことにしました。施工を解説していきます。
鉄骨のレールを作る
壁に軽量鉄骨を敷いていきます。
写真では上部(および見切れている下部)の鉄骨がビスで固定されていて、レール状になっています。
まずはこのようにレール状に上下に鉄骨を取り付けるところから開始します。
今回は壁がたまたまくぼんでいたので、上の段差部分にビスを打っています。(つまり壁の段差ごとなくしていきます)
右側の収納扉の可動域を考えて壁の右側は鉄骨を敷いていないことにも注意してください。この部分は石膏ボードを貼ります。
もう一面の壁はこのように鉄骨を組みました。
どちらも下部は床にビスを打ち込んでいますが、下の例では上部の鉄骨は壁に水平にビス止めしています。
鉄骨の配置、固定する位置が決まったらそれに合わせて鉄骨を用意します。
鉄骨の長さをあわせる
上下のレールとなる鉄骨、およびレールの中に配置される鉄骨は壁の幅や高さに合わせてチップソー切断機で切断します。
断熱材を敷き詰める
レールから軽量鉄骨を一旦外して断熱材のスタイロフォームを敷き詰めます。
まず敷き詰める断熱材を壁に合わせて切っていきます。
スタイロフォームは発泡スチロールとスポンジの中間のような質感をしているのでカッターで切れます。
断熱材を壁に貼り付けます。両面テープを均等に貼っていって、その間にボンドを塗ります。
コンセントの部分は断熱材を切り抜きます。
コンセント部分については延長コードを使って石膏ボード側に新しい電源を作ります。
断熱材を敷き詰め、鉄骨をレールに戻しました。
鉄骨の上に石膏ボードを貼っていく
石膏ボードを鉄骨部分にビスで固定していきます。
もちろん石膏ボードも同様に貼り付け箇所に合わせてサイズを調整します。
石膏ボードを切る
石膏ボードはイメージと異なり非常に簡単に切れます。切るというより直線に沿って割るイメージです。
ボード表面の紙がしっかり切れるように定規を当てカッターで線を引きます。
ひっくり返してまた同じラインを切ります。
切ったらあとはこれに合わせて割っていくと綺麗に割れます。
石膏ボードの貼り付け
先ほどの鉄骨に対して石膏ボードを貼り付けます。石膏ボードはビスで鉄骨に打ち込んでいきます。
手を借りて下から石膏ボードを支えてもらっています。
ボードのどこに鉄骨が通っているか、目印に墨壺を使ってラインを引いておきます。
貼る際の注意事項
石膏ボードは意外ともろく、とくに点や線での衝撃に弱いです。なので壁際にピッタリはめ込もうとして無理に押し込んだり叩くと割れてしまいます。
そこで力を入れて押し込む場合は必ず当て木をしてハンマーで叩きます。
無理に押し込んで割れてしまった場合、表面はあくまで紙なので内部で砕けてしまった状態になります。見た目にはよくわからないのですが触れば中で割れていることが分かります。そのままにするとクロスを張った時に微妙な段差が浮いてしまいます。
もし貼り付け段階で石膏ボードが割れてしまったら表面の紙を切って剥がし、割れた箇所をパテがけします。
コンセント部分の制作
石膏ボード側に新しくコンセントを作ってやる必要があります。
先ほど断熱材を切った時と同じく石膏ボード側も切ります。
カッターでは深く切っていけないので、くり抜く場合はドリルで穴開けしてノコで切ります。
コンセント金具を石膏ボードに取り付ける際はそのままだと下地の強度が不十分なので、後ろに軽量鉄骨の余りを小さく切って取り付けます。
この鉄骨に対してビスを打ち込んで金具を固定すれば十分な強度になります。
ボードに金具を取り付けたら石膏ボードを壁に貼り付けます。
石膏ボードをすべて貼り終わりました。この状態であとはパテがけしてクロスを張れば終わりです。

